第一章・続3

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車両に待機する織田刑事は、その言い合いを盗聴器にて聞いた。 そして、一緒に乗る刑事達に応援で来た私服警察官三人を伴って飛び出す。 これは賭と思う里谷刑事だが、木葉刑事の読みを信じて市村刑事と合流。 所轄の刑事二人に、二課の刑事二人含めた全員で、岩元の居るビルへと踏み込んだ。 一方、 “現場に木葉刑事が踏み込んだ” この情報を受けた本部は慌てて命令を出す。 “青い袱紗を持って、詐欺の獲物を狙う若者を、容疑者として逮捕せよ。” と。 その頃、多勢に無勢か。 岩元とその他二人の構成員は、殺人教唆の首謀者としての容疑にて逮捕に至る。 篠田班の面々、二課の迅などの刑事たちは、もうこのまま一気に押し切る様な捜査をするしかないと覚悟を決めた。 だが、木葉刑事にとって、これは一か八かでは無かった。 岩元が清掃業者を呼んだのは、須藤なる若者へ警察の手が及びそうに成った為で。 鑑識の調べが拠点のビル入れば、詐欺グループの詰め所的なフロアには、血を踏んだ靴の足跡痕が在ったり。 血液の着いた指にてあちこち触れた跡も出た。 物的な証拠が出て、捜査本部の郷田管理官や刑事たちも安堵し。 迅や篠田班の刑事たちも、何とか逮捕が正当なものに成ったと胸を撫で下ろした。 処が、里谷刑事だけは、その想像が食い違う。 (幽霊が視えていたんだわ。 証拠隠滅が行われてしまうって、事前に知ったのね) と。 だが、此処からが時間との戦いでも在る。 逃げ回って居る須藤なる若者を含め、特殊詐欺に加担する若者達を迅速に確保する事が求められた。 そして、この強引な逮捕劇で得をしたのは、迅ほか二課の方達だ。 不意打ちに踏み込んだお陰で、詐欺を証明する証拠は大量に押収する事が出来たのだから…。 岩元逮捕より二日して。 一課としては、‘殺人の共同正犯’の容疑で逮捕と切り替える。 “まだ自分まで辿り着くには、時間が掛かるだろう” と、彼は思って居たらしいが…。 逮捕されて木葉刑事から推測の事件の経過を聞かされた時、自分と部下の犯行を完全に立証された事を知る。 部下の履いていた靴裏に、殺された老婆の玄関先の土が血と一緒に付着していた事を清掃業者だけで悟られるとは…。
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