第一章・続3

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実は、実行犯と云うべきか、警察との関わりを探らせた岩元のとなる若者だが。 深夜近くにて接触した被害者よりあれこれと尋ねられては、話すうちに警察官ではないボロを出してしまった。 そして、問い詰めて来る被害者に掴み掛られたあと、力任せに被害者を玄関先で突き飛ばした。 頭部を強打して血を流し始めた被害者で、初めて犯す殺人に怯えた若者。 被害者が死んだかどうかを確認しようとして近づけば、まだ息の有る被害者に足を掴まれてしまう。 驚いた若者は、その手を振り払う時に血だまりへ足を置いて、更にその場で滑ったのだ だが、この探りを入れた若者の他に、警官の格好をして警察署へと自転車を盗みに入って、また返した若者は別人である。 被害者を殺してしまった若者は、殺人を犯したと狼狽の極み達し。 自転車を盗んだ別の若者は判断に困って、首謀者の岩元に連絡をしたが繋がらず。 対処に困って警察署に自転車を返した後、犯行を犯した若者を車でこの事務所に戻らせた。 岩元は事務所へと二人が戻った事を後で知り、事務所に来るなりに命令をして事務所を掃除させた。 だが、血の跡など簡単に消せるものではなかったようで、それが岩元を捕まえる詰めの一撃となった。 鑑識班が岩元達の使う事務所の捜索をして見れば、犯行時に犯人が着た警察官への変装用衣服一式が発見される。 この服に着いた体毛や皮膚のDNAが、若者のものと一致。 然も、血に染まった手袋の裏側に残る指紋も、素手で触った自転車に残った部分指紋と一致する。 また、警察官の衣服には、岩元の側近となる組員の指紋が付着していて、彼の周りに付き従う者も逮捕となった。 そして、其処に来て更なる駄目押しは、捕まった若い元暴走族の若者達がペラペラと詐欺の事を喋ったことか。 被害者が有余を求めたと聞いた岩元は、 「有余だぁ? そりゃ、ちっと怪しいぞ。 そのババアがサツとツルんでるなら、どんな手でもいいからババアをどうにかしろ」 と云ったらしい。 だが、実行犯の若者は、‘殺せ’という意味では無かったかもしれないと思ったらしい。 処が、致命的な怪我をさせて事務所に戻れば。 「おう、血だらけじゃねぇ~か。 おしおし、ババアの口を封じて来たな」 こう喜んで自分を称えたと言う。
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