第一章・続3

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岩元の狂気は、手下の若者達ですら困りものだったらしい。 だが、狡猾で金回りは良く、安定した報酬が払われるから付き従ったまで。 捕まったが最後、最後まで黙秘する義理立てもする価値がなければ、彼を守る人情も無い。 警護課の刑事達を襲った時と比べると、寄せ集めの集団に過ぎなかったらしい。 木葉刑事が岩元の取り調べに参加したのは、最初の一回だけ。 後から挙がる証拠を元に追求したりするのは、里谷刑事やら葛城刑事。 岩元がのらくらと追求を無視する間は、迅など二課の刑事と共に余罪追求の為、若者達の全員確保へと動いて居た彼だった。 木葉刑事他、一課の刑事にその捜査を命令したのは、誰でもない郷田管理官。 この手の特殊詐欺では犯罪がバレた時、逃げる為に怒った老人を怪我させる事件も起こって居る。 傷害容疑をくっ付け、岩元のグループを根絶やしにするつもりだった。 さて、外堀も内堀も埋められた岩元は、逮捕から8日後。2日ぶりに取り調べ室へと引きずり出された。 この日、岩元は木葉刑事と対峙して座り。 見張り役の様に壁へと凭れ居座る飯田刑事を睨み付けてから。 「デカさんよ。 俺は、なぁ~んも喋らないゼ。 ‘殺人の共同正犯’って、な~んで~すか~」 と、木葉刑事をからかって来た。 遺恨が残る岩元相手に、飯田刑事はそんな岩元を睨み返すが。 の~んびりと座る木葉刑事は、 「黙ろうが、喋ろうが、須藤って若者も逮捕されたし。 下っ端の元暴走族の若者達も、み~んな捕まった。 もう、年貢の納め時だよ」 と、どっしり構えている。 然し、須藤の取り調べに於いて解った事は、 “半月ほど前に、岩元から詐欺の捜査本部が立ち上がった警察署の下調べを受けた” と云う事実のみ。 一課、二課、双方でそれぞれに、裁判へ向けての証拠固めをする最中の今。 郷田管理官の指示の元で指名をされた木葉刑事は、この今に岩元へと問う。
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