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だが、全く気に障らないのか。 呑気な態度でペンをクルクルと回す木葉刑事は、それで納得がいった、と。
「ほぉ~、なるほどね。 だが、悪さを遣るんならサ、それはそっちの勝手だろうけど。 警察官のフリをするってのは・・頂けないね」
木葉刑事の緩い物言いに、寧ろ岩元の方がフザケて居ると感じる。
「フン。 テメェ等ケ~サツを潰せるならばなぁっ、な~んだってするさ」
机を叩いて言った岩元は寧ろ宣戦布告とばかりに、身振りや手振りを添えて大声を出して云う。
一緒に取り調べ室に居た調書を取る男性警官も、また岩元の左側後方に控える飯田刑事も、その態度に怒りと恐怖を覚える。 このままでは岩元が死ぬまで、この戦争の様なやり合いが続くのだと…。
だが、木葉刑事だけは、安穏とすら窺える態度のままに。
「ふぅ~ん、それはご苦労な事だねぇ。 ま、‘生きて’また出所して来れた時、お宅を取り巻く環境が良い方向に変わってると・・イイねぇ」
何故か意味深な言い方をした。
その様子を見る郷田管理官は、木葉刑事の余裕が解せず。
「里谷刑事、木葉刑事は・・どうしたの?」
と、里谷刑事に尋ねる。
だが、相手は嘗ての仲間を殺したと言って良い岩元だ。 殺意すら湧く里谷刑事は、苛々して。
「さ・・さぁ、解りません。 でも、彼を指名して正解ですね。 私なら、もっ・もう我慢が・・出来ない」
元は警護課の里谷刑事だから、その本音を理解するのは容易い。 寧ろ、同僚ではないが、同じ警察官を殺す様に指示を出した相手を前にして。 あれだけ冷静に対応の出来る木葉刑事は、確かに他の刑事ですら認める処が在る。
さて、それは岩元も同じらしい。 警察の敵として対立する自分に対して、全く表情を変えない木葉刑事には、岩元の方が不審感を抱く。
「‘環境’だぁ? テメェ、何を言ってやがる」
机に身を乗り出し気味と成って、木葉刑事の腹を探り始めた岩元。
見ている里谷刑事や郷田管理官には、どっちが取り調べをしているのか解らない。
が。
岩元が机を動かす為かペンを仕舞って、爪を見始めた呑気な態度の木葉刑事は、
「君達さ。 このひと月ぐらい前かな~。 墨田区の方で、飲み屋を経営してる年配女性の母親から。 霊感商法的な他の遣り方で、400万ほど騙し取ったらしいじゃんか」
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