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「お・おい、俺がサツカンを殺す様に言ったからってよ。 そっそそ、そんなうっ、嘘を云うなよ。 そんな・・そんなバカな…」
あの岩元が、一人でコントでも演じるかの様に独り言を重ね、嘘だと笑おうとする。
だが、態度や雰囲気はそのままに、木葉刑事の追撃は続く。
「あの三橋組長って人の家は、サ。 親や兄弟に親戚も含めて、警察やら財務やら文部なんか省庁に勤める人が多い、所謂の公務員系一家らしいじゃん。 その家の柵を嫌ったあの人は、ほぼ勘当同然でその道に入ったのは、世間でも有名だったらしいけど。 唯一、律儀で義理堅い母親の事だけは、勘当されても大切にしてたみたいね~」
木葉刑事の話を聴く岩元の顔が、どんどんと怯えて行く。 その変わり様は、間近に居る飯田刑事が一番に良く解る。
(話がハッタリじゃ無いなら、こりゃあ岩元もヤバいぞ)
さて、木葉刑事は爪を軽く擦りながら。
「あの墨田区で、自分の姉に飲み屋をさせる為にそっと金を出したのも。 そのお母さんの老後を守る為だったらしいよ~」
其処まで聴いた岩元の顔からは、既に毒気が全て抜けていた。
「ちょっと待て、ほっ・ほ・ホントに・・死んだのか?」
確かめ様と机に身を張り付けて、木葉刑事に迫って聞き返す岩元。
適当な態度で頷く木葉刑事。
「らしいね。 然も、そのお母さんは、岩もっちゃんのしてた様な詐欺の遣り方を、お母さん成りに自分の息子で在る三橋組長に批判して、ね」
いよいよ己の置かれた状況が、捕まった事など些細に思えるほどにヤバいと感じたのだろう。 眼が泳ぎ、口を開きっ放しにする岩元。
だが、彼を見ない木葉刑事は、更に続けて。
「朝の組対課の方からの情報だとね」
と、言えば。
「何だっ?」
と、食い付く岩元で。
二人の様子は、既に刑事と容疑者では無い。
「母親の葬儀や初七日を終えた三橋組長が、独自に構成員を動かして初めてね。 お母さんを騙した詐欺グループの特定を、本気で始めたみたいッスよ」
「マジかよっ。 嘘だ、そんなの嘘だろっ? な? な゛っ? 今回の事件も含めて、全部事実を話すからっ! 嘘だと言ってくれっ、な、刑事さんよっ」
木葉刑事の肩に手を掛け、声をまた強くして言う岩元。
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