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特に走るわけでもなく、いつも通りの歩幅で家に帰宅する、以前と何ら変わらない。
そう言い聞かせた。しかし、コツ…と音が響いた。
足音だ。
普段聞こえないはずの後ろからの足音が聞こえるのだ。
コツ…コツ…コツコツ…。
毛穴が開いた。
少し早足で歩いてみるとわたしの足音と同じテンポで、わたしの足音より少し大きな足音がコツ、コツ、と耳に響く。
わざと、音を立てている。
今まで存在感を最小限にとどめてきたこの気配が、今わたしに主張しているのだ、自分はここにいるぞ、と。
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