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「おつかれさまでしたー」 たった一人の名前も知らない日雇いスタッフの声がカーテン越しに突き抜けた。 都内で一番安い薄暗いレンタルの小さな地下スタジオ。 自分の所有物ですらないこの場所がわたしの城だ。 「まりん邪魔」 さっきまで笑顔でほほを寄せ同じ楽曲を歌っていたかりんがゴミを見るような目でわたしを睨みつけながら言った。 三年前に結成された小さな芸能事務所の人気のないグループ、「フェアリーズ」のメンバーは売れるこということを諦めヘビーな固定ファンに好きな物を買ってもらう、または現金をもらう、ということしか考えなくなってしまった。
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