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「音楽の世界を現実の世界にね……。ヴォルフガングは、残念ながら音楽ではそれはしなかったわ。でも、音楽以外のところではいろいろやってたのよ」
「なんで音楽以外だったんだろうか。それは何?」
「フリーメーソンリーよ」
「ああ……」
ぼくは溜め息のような息をついた。彼女はフリーメーソンリーにぼくを入れたがっていた。だが、ぼくは拒否した。それどころか、彼女までも脱会させようとしたのだ。
「彼は自分の神についても深く悩んでいたわ。つまり、自分にこんな才能を授けた神はどっちなのか。カトリックの神なのか、フリーメーソンの神なのか」
「フリーメーソンリーは宗教団体じゃないはずだが」
「でも、あがめている神はあるわ。それはキリスト教の神も指しているようだけど、……やっぱり、名前が、違うじゃない。まあ、カトリックでは三位一体って言って、ヤハウェもキリストも同じものだとしているけど……」
「何が神だ! 彼女自身がどれだけ苦しんだと思うんだ? 才能はすべて彼女のものだ!」
「だったらあなたは、才能は偶然の産物だと思うの?」
「それは……偶然ではないかもしれない。でも偶然かもしれない。どっちにしても、神がそこに出てくるのはこじつけだ。彼女とぼくはなぜかこうなってしまった。その事実に対しては確かに責任があるから、これからもぼくはやるべきことをやっていくだけだ」
「そうさせたのが神とは思わないの?」
(P347~355)
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