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「モーツァルトこそが正当な系統なのよ。そしてそれを引き継げるのは、モーツァルトの本当の息子だけ。彼こそがモーツァルトⅡ世になるのよ。これまでのマエストロたちの世界にも、モーツァルトの世界にも、あなたはもう必要ないわ。もうわたしたちの邪魔をしないでちょうだい!」
とことん冷たいその口調。彼女に言われることはショックなことばかりだった。そこで、ぼくはようやく目が覚めた気がした。あのとき、モーツァルトを置いて去ったときと同じように、モーツァルトのことはコンスタンツェに任せて、もうぼくはぼくの道を行こうと思った。それは苦い涙とともに固めた決意だった。
「……コンスタンツェ、ぼくはモーツァルトに会ったとき、こう言ったんだ。あなたの音楽は弱いって。弱いから、夢幻の範囲を超えられないんだって」
ぼくは涙を拭いながら、笑って彼女に言った。
「ああ、それね」
コンスタンツェは知っていた。どうやらモーツァルトから聞いていたようだ。
「それ、彼自身も長い間ずっと気にしていたことだったのよ」
とコンスタンツェは言った。それは意外な言葉だった。
「え? だけど彼女はあのとき反論したよ? 自分の世界は絶対だって自信を持っていた。絶対に変えられないって」
「でも、音楽なんて形にならないじゃないの。どうあがいても、音楽の世界だけで終わっちゃうでしょ」
「いや、ぼくは、彼女の音楽の世界を現実にしてほしかったんだ。だからぼくは、彼女に言ったよ。あんな肌身丸出しで傷つけられまくってる音楽じゃなくて、もっと厚着させて、鎧でも着せて、強くして、ちゃんと勇み立てってね」
「果たしてどっちが強いのか分からないわね。モーツァルトは裸のまんまどんなに傷つけられても愛し抜いた。ベートーヴェンの愛し方とはずいぶん違うのね」
とコンスタンツェは笑う。そして続けた。
「ベートーヴェンは、相手のために、対等に立って本気で戦うのね。それはとてもあなたらしいことよ」
「ぼくらしい、か」
ジョゼフィーネに言われたことをふと思い出しながら、ぼくは笑った。
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