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「芹岡先輩。 あなたは、本田先輩が怖いんでしょう?」
芹岡の黒いシルエットは、茫然と前を向いて固まった。
一瞬、時間が止まったのかとも思えたが、時計の秒針の音が聞こえてきた。
「………何言ってんの?」
低く唸るような声が暗闇から聞こえてくる。
段々と暗さに目が慣れてきて、闇の奥を見つめると芹岡はゆっくりとこちらに顔を向けた。
恐怖が向かってきているイメージが頭に浮かんだが、私は続けた。
「あなたは気付いてないかもしれないけど、本田先輩とすれ違った日、一瞬 顔を強張らせてました。 あれは、怖いものから反射的に身を守る為の行動なんじゃないですか?」
「あと先輩、言ってたじゃないですか。 蝉が怖いって。 …… "大群の蝉の中で紛れて鳴いている蝉もいる。 そいつを見つけるのが大変だった。" あの発言の中の蝉は、………本田先輩ですね。」
その瞬間、芹岡が飛びかかってきた。
ベッドが大きく軋んだ。
「……!」
仰向けに倒れた私に馬乗りになり、両肩を固定され、全く身動きが取れなくなった。
「お前は、何がしたいんだ…?」
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