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"__人間は皆、何かを(うら)まないと生きていけない。" 朦朧(もうろう)としている意識の中で、ぼんやりと視界が開いた。 地面に座っている、俺の(ひざ)が見えた。 "__脅威(きょうい)から、(のが)れる為に。" 声が頭の奥で反響(はんきょう)した。 (ほこり)っぽい空間に思わず(まゆ)をひそめながら、視線を地面に向ける。 見覚えのある靴が二足ずつ無造作(むぞうさ)に脱ぎ捨てられているのが見えた。 ひとつは俺のスニーカーだった。 休日の日しか履かない為、汚れが少ないことに改めて気づいた。 もうひとつは親父のサンダル。元はブルーだったのだろうが、()(つぶ)されて黒に近い色になっている。 しかしなんでここにあるのか、わからなかった。 …理解できた。ここは、自宅の玄関のようだ。 徐々に視界が狭くなっていき、身体が(なまり)のように重く、思うように動かない。 "__本当に怖いものは、何?" 俺は何かを(つぶや)いた。 しかし何と言ったのか自分にも分からず、それを頭で考える力さえ出なかった。 残ったのは、見覚えのある声の残響(ざんきょう)だった。
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