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背中一点に、集中した痛みを感じた。針のようなものが刺さっている。
身体が仰け反りそうになったが、唇を噛み締めて耐えた。
背後からククク、という不気味な声が聞こえてくると同時に、心臓の鼓動が早まる。
間違いない、後ろの席の、芹岡 陸の仕業だ。
凶器は何を使っているのか分からないが、太い針のようなものだ。
毎朝、これを耐えながら時間が過ぎるのを待つ、俺にはそれしか出来なかった。
いつも同じ辺りの場所に刺してくるので、傷口が集中して日に日に痛みが増していく。
芹岡の仲間も笑い始め、俺に注目するように大声で何かを言っている。
気付くと いつの間にか教室内の全員が笑っていた。
拳を強く握り締め、下を向く。
笑い声が渦巻く中、俺の耳元で芹岡が言った。
「放課後、付き合ってくんね?」
ドクン、と心拍の音が聞こえた。
目が泳ぎ、生唾を飲む。
嘘だろ…
嫌だ…絶対に嫌だ…!
チャイムが鳴り、担任が教室へ入ってきた。
同時に背中の痛みが消えたこと、教室に渦巻く笑い声がなくなったことに気付かなかった。
それどころではなかった。
あの言葉は、俺が放課後に死ぬかもしれない。という意味だ。
それは過去に二度食らった、日々の苛めとは比ではないくらいの暴力を受けるということ。集団リンチだ。
なんとか生還はしてるものの、それからは何かを失っている感じがする。
胸が苦しくなってきた。頭痛も増してきている。
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