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「くそ、出口はまだかよ…」
キースは流れる汗を拭いながら草むらを掻き分ける。
かれこれ一時間は歩いているが一向に出口が見えない。
それどころか更に深部に行っている気がする。
「やばいな、このままじゃ森でのたれ死んじまうぞ」
いよいよ不安になってきたキースは不意に視線を感じて足を止めた。
「ん?」
辺りを見渡すと草むらの中から二つの赤い光がこちらを見つめている。
「なんだ…?」
一応警戒して竹刀を構えるとそれは唸りながらゆっくり近づいてくる。
月夜の光に照らされたそれは犬と酷似していたがその顔には凶暴そうな目と牙があった。
「おいおい、まさか…また狼か」
しかもさっきの子ども狼より数倍大きい。キースの驚愕の言葉と同時に狼はひと鳴きして飛びかかってきた。
「うおっ!?」
間一髪で避けると狼は方向転換してまた襲ってくる。
「ちっ!」
舌打ちをして竹刀を振るうが狼はそれを避け、そのままキースに飛び付いた。
「ぐっ!!」
咄嗟に竹刀で防御するが狼の勢いに押されキースは倒されてしまった。それを好機とみたのか狼はキースの上に乗り、喉元を食いつこうとする。
「くっ!!この野郎!いい加減にしやがれ!!」
キースは自分を食い千切ろうとする狼の口に竹刀を潜り込ませ必死に抵抗しながらも何とか隙を作って狼の腹を蹴り飛ばした。
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