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「一体何が・・・」
どうやら私以外の時間が止まっているらしい。私はシートベルトを外し車から降りようとしたが扉が開かず、降りることはできなかった。
「無理だぞ。ここから出る事は出来ない。すでに起きてしまったことを曲げることは許されない」
振り返ると、誰も乗っていないはずの後部座席には私がいた。私は自分の目がおかしくなったのかと思った。私に双子がいたなんて聞いたことがないし、第一、私は生まれてこのかたずっと一人っ子だったはずだ。それとも、目の前にいる私は幻か。私は見やすいように体ごと後ろに向けた。
「オレはお前、近藤マサキでもあるし、または違うともいえる。決して双子ではないし、幻でもない」
目の前の私は私の心を見透かしたかのように言った。
「なら、あなたは何です?私と同じ姿をしているのに、私ではないとは」
「さあ、実はオレにもよくわからない。お前の情念のようなものでもあるし、人が死ぬ間際に見えるという走馬燈のようなものでもある。しいていうなら、普段お前が認識していない『近藤マサキ』が一番近いか」
私が認識していない近藤マサキだと言った私の姿をした存在は、つまらなさそうに言った。
「じゃああなたは私、だということでよろしいですか」
「好きに認識してくれればかまわない」
その人は自分がどういうものなのか特に気にしていないようだ。ただ、私がその人を私自身だと認識したほうがいいと直感的に思った。
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