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「おい、全然良くないぞ」
近藤は怒気を込めて言った。
「お前はそれでいいかもしれないが、オレは納得できないぞ。残された彼女はどうなる。今日だって、普段は電車なのに珍しく彼女が『車で迎えに行く』と言ったからだろ。彼女が無くしてしまう大きさが分かって言っているのか」
私は近藤の言うことに何も言い返せなかった。私は今こうやって近藤と話しをして自分が死ぬことに対しての納得をしているわけだが、彼女からしてみれば、突然私がいなくなってしまうのだ。
「そこでだ。オレが現れたのには理由がある。それはお前がまだ死ぬことを回避できる可能性がある。オレはそれを提案するために現れた」
「私が死ぬことを回避できる可能性、ですか」
「そうだ。その代わり、お前は選ばなければならない」
「選ぶって、何を」
「お前が生き延びることで発生する責任だ。人間は自分の人生しか責任を負うことはできない。他人の人生を代わりに背負うことはできない。それを踏まえたうえで選べ。もし、選べないのなら、オレとしては不本意だが死ぬしかない」
「私は、もちろん生きたいです。けれど、他人の人生を背負えるほどは強くない」
私の心は渦巻いていた。このまま死を選んだほうがいいのではないかとさえ、思えるほどだ。でも、彼女を悲しませるほど、そこまで選ばなければならないのだろうか。
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