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◇◇◇
「まだ仕度が終わらぬか」
「やっ…!?」
返事をする間もなくノックと同時に部屋の扉が開かれた。ルナは驚いてペチコート姿を手にしていたドレスで咄嗟に隠す。
グレイはその仕草を鼻で笑った。
「それは何を隠したかった?」
「……っ…」
馬鹿にしたように軽く笑うグレイに言われ、胸元を隠したルナは真っ赤になって睨み付ける。
「どうでもいいが、早く仕度を済ませろ。あるかないかもわからん胸など庇ってる暇はない──」
ルナは付け加えられたその皮肉にぐっと言葉を飲み込んでいた。
「わかったわよっ…急いで着替えるから早く出ていってっ」
ルナは鏡台にあったブラシを握り締めるとグレイに向かって思いきり投げつけた。
その瞬間にふっと姿を消すとグレイは急に真後ろに現れてルナの腕を捕える。
「……っ…!?」
ペチコートのフワリとしたレースの中にグレイの手が潜り込み、ルナはビクリと躰を強ばらせた。
「あっ、やだやめてっ…」
ルナの膝がぶるっと震える。
グレイは後ろから覗くように躰を添わせ、ルナの耳元に唇を寄せた。
「今から紳士淑女の舞踏会に行くのにそんな殺気だった顔をしていては連れて歩けん──」
「……んっ…」
低い艶やかな声音に首筋がぞくりと痺れ、ルナは思わず顔を背けて白い鎖骨を露にした。
耳元で囁いた声と共に吐き出した吐息が肩に伝っていく。
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