いちまいの紙

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何故、ここにいるんだろう。 何故、天から『ごめんなさい』と謝罪されるんだろう。 自分は天に在るものだったのだろうか。 堕天使とでもいうのだろうか? バキ、メキメキッ! ザザザザッ ドンッ なんだろう。近くに何か落ちた音だとは解った。 音がした方をみると人が倒れていた。 倒れているというよりは高所から落ちてきて、あらぬ方に関節は曲がり見るに耐えない人の形になっていた。これは女性だ。 この人を、知っている。 デジャヴ。 視界に一面に広がったスカイブルー。そして訳も分からないままの恐怖と苦痛。どうしようもないという諦めと不条理な結果への不満や憎しみが駆け巡った。 そして記憶。 同じように俺はここへ落ちたのだ。 彼女とドライブの休憩に見晴らしの良い展望路肩に車を停めた。 夜景スポットだが昼はそうそう人は来ない。明るくても眼下の街と奥に水平線が少し見える眺望の良さ。柵の前で並んで見ていたのだ。 一枚の紙を渡され見ると書いてあったのは一言だった。 「ごめんなさい…って何」 そのままの意味だと叫んで俺を突き飛ばしたのは、そこに転がっている彼女。 低いガードレール程度の柵を越え転げ落ちた急斜面。木に衝突して止まればまだ助かったかも知れない。運悪く崖下に落ちたのだ。 二股三股の噂の絶えない俺が許せなかったんだろうか。 日に日に口数が減る彼女。表情も暗い事に仕事で何かあったのかとも聞いた。なんで正面から聞いてくれなかったんだろう。噂は噂だったのに。 そこに在るのは元彼女。俺を殺した罪の意識か後悔からの自殺だろうか。目が合って口が動いた気がした。 また、『ごめんなさい』だ。 ふ、ふ、は、ははは。 今日もひらひらとあの紙が舞って手元に届く。 これはどういう意味だったんだろう。 憎くなってごめんなさい?今から突き落とすからごめんなさい?もう信じられなくなってごめんなさい? 俺は事故死扱いになったのだろうか。 思い出したらもう謝られたくも無い。何に対する謝罪なのか意味も解らない。この紙は大嫌いだ。謝るくらいなら初めからやめとけば良かったんだ。 己が何か判明したのに消失したり、いわゆる成仏は出来ないのだろうか。 俺はこれからどうすればいいんだろう。 この流れを永遠ともいえる程毎日繰り返している事に、男は気付かない。
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