彼と彼女の過ち

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彼と彼女の過ち

「おお! 久しぶり。榎本だよな?」 「……うん。久しぶり、笠原くん。元気だった?」 今日は同窓会。 中学を卒業して丸4年が経ち、あの頃同じ道を歩んでいたクラスメイトはそれぞれ別々の道を選んでいた。 大学へ進学した奴もいれば、就職をした奴もいる。 ……どちらにも進んでいない奴もいるが。 だが、誰一人欠けることなくこの場に集まったのは喜ばしいことだ。 「おう、元気元気! 榎本は……相変わらず綺麗だな」 「えっ……? ちょっとそれ、お酒じゃないよね?」 榎本は目を見開き頬を染め、僕のグラスを指さした。 それから、周囲をキョロキョロと見渡し、近くに人がいないことを確認した。 僕と榎本は広い会場の隅で、壁を背にして並んでいた。 「お茶だよ。知ってたでしょ? 僕があの頃本気で榎本の事好きだったこと」 僕は悪戯に笑うと、榎本は更に顔を真っ赤に染め上げた。 「……なんとなく。でも笠原くんは誰にでも優しかったから、からかわれてるのかと思ってた」 「確かに八方美人だったかもな。失敗した」 「そんなこと……! 笠原くんがいなかったらと思うとゾッとするもの」 そう言って榎本は片手で自分を抱きしめ、肩を竦めた。 中学3年の頃。     
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