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榎本はクラスメイトの女子全員から執拗な虐めを受けていた。
最初は軽い無視から始まり、そのうちどんどん行為はエスカレートしていった。
けれど、芯の強い榎本は決して屈しなかった。
とうとう暴力に発展しようとした時に、僕は彼女に告白をした。
「いや、僕は自分の気持ちを伝えただけだよ」
「でも、笠原くんと付き合うようになって私は虐められなくなった。今でも感謝してるよ」
そう、僕と付き合うようになった途端、蜘蛛の子を散らすように、虐め行為はなくなった。
「僕のお陰じゃないとは思うけど……本当に良かった」
「うん。卒業してから高校が別々になっちゃって自然消滅みたいになっちゃったけど、今日会えてよかった」
「僕も」
そう言って、互いに顔を見合わせ、ふっと笑った。
「おいおい、そこのおふたりさん! 勝手に雰囲気作らないでよ。こっち来て話そう!」
そう言って手招きをする女子は、榎本を虐めていた首謀者。
僕たちは壁から背を離すと、皆が集まる輪の中へと入った。
「ね、あんた達まだ付き合ってるの?」
「ううん。久しぶりに会ったの。ね、笠原くん」
「ああ」
そう答えた僕に周りの女子の視線が集まる。
ああ、これは今日まで黙っていたことがバレてしまうかもな、と苦笑した。
「大変だったのになー」
「何が?」
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