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キョトンとした榎本に、他の女子が横から会話に入ってきた。
「え? 榎本さん知らないの? なんで虐められてたか……」
「ちょっと、やめなよ。今更言わなくてもいいじゃん」
周りがざわつき始める。
何も知らない男子も近くにいる女子に理由を聞いているみたいだ。
「良くないでしょ。理由はどうあれ私はずっと榎本さんに謝りたかったんだ。笠原くんは当然全てを打ち明けて謝ってるんだと思ってた」
話が見えていない榎本だけが、不安そうにキョロキョロを視線を動かしているが、周りの男女の冷たい視線は僕に集まっていた。
「……どういう……意味?」
そう呟いた榎本に、僕は観念して両手を挙げた。
「好きだったからだよ。誰から告白されてもおちない榎本を手に入れたかったから、協力してもらっただけ」
あの頃、僕は男女共にクラスの中心にいた。
僕は誰にでも優しくしたし、悩み相談を受けることも多かった。
そんな僕からの初めての相談に、女子達の方が喜んで乗ってくれたのに。
筋書きはこうだ。
虐められ、心身ともにすり減り、味方が誰もいない時に僕が手を差し伸べたら、絶対におちる。
結果、僕は榎本を手に入れることが出来た。
「……酷い……」
榎本は、頭を垂れて肩を震わせていた。
「ごめんね。でも本当に好きだったんだ」
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