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「お待たせ致しました。デラックスハンバーグのサラダスープセット、ライス大盛りでございます」
運ばれてきた料理は、まず私の目の前に並んだ。カルボナーラ単品のマユが露骨に嫌な顔をする。
「やだ、ソーセージなんて頼まないでよ、終わったばっかなのに」
意味深な台詞に、男の店員の視線が一瞬彼女に向かう。刺身定食を注文した最年長の翔子が、テーブルを指で叩いて彼女を表情で叱る。
「あっ、ごめん」悪びれずにまたマユは声に出す。翔子はそれも余計だと言いたそうな目をしていた。
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
店員が去ってから、私は言った。
「私はソーセージを頼んだんじゃなくて、ハンバーグに海老フライとソーセージが付いてるだけ」
「だってぇ、ソーセージ」
「もう、ソーセージソーセージ言わないでよ。こっちも思い出して食欲なくなるわよ」
翔子は小皿の醤油にマグロの切れ身を軽く滑らす。
「翔子のほうも、よくナマモノなんて食べる気になれるよね」
私は別添えのデミグラスソースを、ハンバーグにまんべんなくかける。
「アスカまでそんなこと言って。同じナマモノでも、お刺身は関係ないでしょ」
「そうだね、口に入れたわけでもないしね」
笑う私にも翔子は怒った顔を見せる。マユは言う。
「それにしてもアスカはいつもいっぱい食べるね」
「ほんと、なのに全然太らないなんて羨ましいわ」
翔子もすぐに機嫌を直し続けて言った。私は返す。
「いつもじゃないよ。普段は殆んど食べてない。なのに、あれの後は無性にお腹がすくの」
「してもないのに?」マユは訊く。
「うん、見せてるだけなのにね。見てもいるけど」
笑ってフォークに刺したソーセージを噛み切った。
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