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「えっ?ぼくが…。でも、ぼくのお母さんはアヒルなの。」
白鳥の子は、アヒルのお母さんこそ、本当のお母さんだと刷り込まれていました。
鳩の女医さんは、ご近所を周り、白鳥の子の本当のお母さんを探しました。
でも見つかりませんでした。
翌朝、白鳥の子が目を覚ますと、お母さんアヒルが言いました。
「だ~め。口開けて。全部食べたらご褒美あげるから。」
「グァー、ガー、ウ゛ァー」
白鳥の子は、突然のお母さんアヒルのお見舞いにビックリしてしまい、自らの羽で目を覆っています。
お母さんアヒルは白鳥の子の、くちばしを優しくつつきます。
「ほら、口開けて。」
「グァー、ガー、ウ゛ァー」
白鳥の子は涙を流しながら、お母さんアヒルのくちばしからご飯を食べます。
ねぇどうしてなの。どうしてなの。ぼくのこと嫌いなんでしょ。
白鳥の子は、お母さんアヒルが餌付けをしてくれている意味が分かりません。
なので、涙がポタポタ落ちました。
お母さんアヒルの優しいくちばしと温もりの中で、白鳥の子は涙が止まりません。
お母さんアヒルは柔らかい自分の羽で優しく涙を拭ってあげています。
泣きながらでも白鳥の子はご飯を全部平らげました。
お母さんアヒルは、ご褒美に哺乳瓶に入ってるミルクセーキを白鳥の子にあげました。
ミルクセーキに使われている卵はお母さんアヒルが産んだものです。
白鳥の子は、これが大好物でした。
はにかみながら、お母さんアヒルの顔を上目づかいで見上げると、そのまま上を向いて、哺乳瓶から勢い良く一気に飲み干しました。
「グァー、ガー、ウ゛ァー」
お母さんアヒルは微笑みました。
白鳥の子は、もう空になった哺乳瓶を上下に振り、名残惜しそうに、最後の最後の数滴まで飲み干しました。
そして空になった哺乳瓶を強く抱きしめながら、鳥の巣ベッドに寝ました。
何日か経ち、退院の日がやってきました。
お母さんアヒルは、今度は優しく白鳥の子を背中に乗せて、湖を泳ぎ、家に帰りました。
白鳥の子は、おっかなびっくり家に入ると誰もいません。
まだ泳ぎ慣れない雛である4羽のアヒルの子たちは遊びに夢中になり過ぎて、湖で溺れて死んしまっていたのです。
お母さんアヒルは、白鳥の子の頭を優しく撫で、いっぱい、いっぱいキスしました。
白鳥の子は、嬉しくて嬉しくて、涙が止まりません。
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