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なんであんな奴と結婚したんだろうって考えても答えは一つ。全てはこの子を身籠ったからにほかならない。
風俗に就いてしゃぶりたくもねえチンポしゃぶってんのも、この子を身籠ったからにほかならない。
甘えた思考は捨て去って、捨て去って、捨て去って、と。あの頃のあたしが噴水で遊んでいるのが幻視(み)えた。
もううんざりだって言ってんの。半ば強引に和也の腕を引き、駅へと歩を進めた。
******
「嘉邦(よしくに)市駅で発生した人身事故により、現在運行を見合わせております。お急ぎのところ、申し訳ありません」
なんてことだ、こんなことならもうちょっとゆっくり家を出りゃよかった。とことんツイてねえな。
僕は巽の肩を殴った。巽も僕の肩を殴った。なあに、単なるじゃれ合い。
「それにしても、人身事故か。株価が暴落したんとちゃうか? FXで全財産溶かしたとか?」
「老立くんも近い将来、線路に飛び込みそうな顔してんで」
「アホか。僕は死なへんって。それより、大学卒業したら彼女と結婚するつもりやねんけど、どない」
「おっ、死亡フラグやんけ」
そんなことをふと、思い出した。死にたさに拍車がかかる。間もなく電車はやって来る。落ちかけの赤く染まった葉を巻き上げて。
僕の人生、なんやったんやろうな。
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