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 東京の街路樹がはらはら紅葉を落とすのをまるで真っ赤な血しぶきのようだと老立が独りごちているから、俺はその言の葉を拾い上げる。そんなことを言ったらバチが当たんぞ、と。  偉そうに言いやがって、なあんて老立と巽刑事に、肩を殴られた。こいつらなりのスキンシップだろうがなかなか痛いんだこれが。  命は紅葉みたく落ちるものだ。  命は紅葉みたく拾うものだ。  夜通し飲み明かして三人分伸びた影に朝日が寄り添っている。
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