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「花蓮ちゃん、何か知ってるのか?」
警戒音に紛れて、猛が後ろに声をかける。ヒロインを演じることが多い花蓮は、人気俳優である猛との共演が多い。そのため、二人は顔見知りなのだ。
花蓮に話しかけたとき、真鈴は嫌だなと思いながら、さっきの言葉の意味が気になっていたため、黙って聞いていることにした。
「私が生まれて、今日でちょうど一年なんだよねー」
「は?」
「だから、私が生まれて、今日でちょうど一年なの」
猛は意味が分からないという顔を浮かべて、困惑している。横で聞いている真鈴も全く意味が分からない。
「それでね、私が生まれた日って、ちょっと意味があってー」
その言葉と共に、ディスプレイが切り替わる。そこには、理解できないことが書いてあった。
猛も、真鈴も、理解ができていない。そして、周りも理解できていない。あまりの衝撃に泣き叫ぶ声が聞こえ、混乱がイベント会場に広がっていた。
「私が生まれて一年経ったら、みーんな、消えちゃうの」
その中で一人冷静なのは、花蓮一人だった。
彼女は、一年前、管理者が自動運営モードに切り替えた瞬間に起動したデータであり、消えることは分かっていたのだ。いや、消えるために生まれてきたバーチャルタレントであったといった方が正しいのかもしれない。
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