idol crisis

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望月花蓮──約一年前にデビューして以来、急に人気の出たアイドルである。そのポスターはポップで、かわいくアイドルらしい雰囲気を醸し出している。 目がパッチリしており、その目に合わせているように配置された顔のパーツは、彼女の目を引きたてて、かわいさをアップさせていた。 「この子さえ、出てこなければ…」 そう憎々しそうにつぶやくのは、演技派女優としても名高い藤宮真鈴。最近は、花蓮の勢いに押され、活躍の機会を失っている。 花蓮が多方面に活躍するようになるまでは、ドラマのヒロイン枠といえば、真鈴のものであった。しかし、花蓮が活躍するようになると、その機会はどんどん減っていき、それに従って人気も落ちてきていた。 「基本的にデビューと同時に火がつく子なんていないのに、何でこの子だけ…」 悔しさで涙があふれる。どこを見ても花蓮のポスターであふれ、あちらこちらで花蓮の歌が流れる。他のアイドルを見ることはなくなったし、花蓮以外がヒロインを務めるドラマなど、しばらくないといっても過言ではなかった。 男性俳優は、人気がある俳優が数人おり、その中から順番に選ばれている印象があるのに、なぜかヒロインは変わることはなかった。 それは最近のドラマのシステムによるものだとは理解していても、心では納得ができない。心で思うことと、頭で考えることは、バラバラな真鈴であった。
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