9: 量産型

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新製品のパーツの回収から戻った290325Q号が何か考え込んでいた。 「どうした、何か……ミスでもしたか」 「ミスならとっくに相談してますよ。今日、例のN社に行ってきたんですけど、そこのアンドロイドがうちとはずいぶん違ったもので」 「社風か」 そうじゃなくて、と290325Q号はいう。そうじゃなくて、全く別の生き物のような。 受け付けに立つアンドロイドにパーツの問合せをして、手続きを待つところまで違和感はなかった。暇潰しがてらそのアンドロイドに「趣味は?」と話しかけてみたという。 「製品目録にありません、って言うんですよ。在庫ありません、発注しますか?って」 あなたの趣味ですよ、何が好きですか。どちらも製品目録にありません。検索エンジンを拡張します。カテゴリを選択してください。タブレットの表示は機械パーツカテゴリばかり。 「趣味は、どこのパーツなんだろう……」 「……それ、量産型だな」 りょうさん。繰り返して少し考え、得心いったようにうなずいた。それから躊躇うように口が開いて閉まる。 「僕は、量産型でしょうか……?」 趣味を持たない290325Q号は、そんなことをつぶやいた。
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