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「ふわぁーっ」
私は、ベッドからむくりと起き上がると、大きく『伸び』をした。
窓の外を見てみると…
明るく穏やかな朝の光がカーテン越しに部屋の中に射し込んで来ている。
枕元の時計は、朝の9時。
「うーん。今日も気持ちの良い朝だなぁ」
私は、ベッドから抜け出すと、シャーッ!とカーテンを開き、パジャマを脱いで普段着に着替えた。
「あ…そうだ」
と、書斎に行き、机に置いてある大学ノートとボールペンを手に取りページを開く。
(ここ最近の私の『習慣』だ)
そのページには…
いくつかの『言葉』が書き込んであった。
『すいません』
『ごめんよ』
『申し訳ない』
『すまん』
『メンゴメンゴ』
『かたじけない』
『ソーリー』
そのどれもが…
様々なバリエーションの『謝罪の言葉』…。
勿論、書き込んだのは、この私だ。
「えーっと、
昨夜の夢の中で聞いた『謝罪の言葉』は、確か……『ごめんなさい』だったな…」
と、私は思い出してその一番下の行に『ごめんなさい』と、書き足した。
いつもながら…
その『夢』の内容は、はっきりとは覚えていないが、私に語りかけて来たあの声と言葉だけは、なぜかいつも鮮明に頭の中に残っていた。
(恐らく、昨夜の夢で私が聞いた『謝罪の声の主』は…感じからして、若い女性だろう)
私が、『ここ』に住み始めてから…今日で、まる一ヶ月。
その間に、
私は昨夜に至るまで数日に一度くらいのペースで、実に様々な老若男女の謝罪の声を夢の中で聞いていた。
そこで…私はちょっとした思い付きで習慣的にその言葉をノートに書き記し始めたのだ。
私は…
その『謝罪の主たち』に会った事も無ければ、
一体、誰なのかという心当たりも無い。
いや。
心当たりが無いというのは…
正確な表現じゃないかもな……。
恐らく、この謝罪の主たちは皆…
ここから4キロほど離れた所に有る、『〇〇霊園』に住まう(?)霊たちだろう。
まあ、『霊が出て来る夢』と言っても…
その夢の内容を私はよく覚えていないし、一度だってカナシバリになった事も無い。
(むしろ深く睡眠をとる事ができ、翌朝の目覚めは、すこぶる良いくらいである)
じゃあ、何で…
その夢の中に出てくる声の主が『〇〇霊園』に住まう霊たちだと分かるのかと言うと…
それには、こんな理由が有る。
あれは…
今から、ちょうど一ヶ月前の話だ……。
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