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さて。
改めて、自己紹介させて頂くと…私の名前は、松本明夫。
職業は、小説家だ。
今から一ヶ月前の事…。
私は、どこか郊外の静かな環境で新作小説の執筆に集中したいと考え、その条件に見合う新居を探していた。
「先生!それなら良い物件が有りますよ!」
相談に行った不動産屋の担当者、鈴木君は目を輝かせながら私に『ある物件』をすすめて来た。
それは、都心部からバスで30分ほど行った所に有る、とあるベッドタウン。
「街中からそれほど離れた場所ではないのですが、自然に囲まれた本当に静かな場所ですよ」
鈴木君は説明を続けた。
「ほぉ。それは良いな。
たまに街中の雑誌社に行く事が有るから、いくら静かな環境と言っても、あんまり街から遠く離れたイナカでも困るなぁと思ってたんだよ」
私は、うなずいた。
鈴木君の話によると…
そのベッドタウンは、今から一年ほど前に出来たばかりなのだそうだ。
近隣にはコンビニが二軒有るし、小さいがスーパーも有る。
都心部への直通バスも二路線走っており、自然に囲まれた環境でありながら人が住む便利さをも兼ね備えた、まさに理想のベッドタウンという訳だ。
そこには、鉄筋二階建ての建て売り住宅が十棟、並んで建っていて、既にそのうち八棟には入居者がおり、その中には定住せずに別荘代わりに使用している人もいるらしい。
(家を買い取って住む事もできるし、管理会社に家賃を払いながら住む事も可能との事)
「なるほど…。
じゃあ、今のところ空いている物件は、二棟のみという訳だな」
私は、腕組みしながら口を開いた。
「はい!
私としましては、断然、A棟がオススメです!」
と、鈴木君が目の前で広げてくれた現地の区画図を見てみると…
小さな四角いマークがあちらこちらに点在しており、(そのそれぞれにA、Bといった具合にアルファベットの大文字が記載されていた)そのうちの八つには黄緑のマーカーでチェックが入れてあった。
恐らく、それらが『入居済み物件』という事なのだろう。
鈴木君がオススメした『空き物件』のA棟は…
周りをぐるっと他の家々に囲まれていた。
私が、更によくその区画図を見てみると…
住宅街から少し離れた場所に『ぽつん』と、もう一軒『空き物件』が目に止まった。
そこは、D棟と記載されていた。
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