【ゴースト・オブ・ザ・謝罪】

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「幽霊が出る…だって?」 鈴木君は、驚いた。 D棟は勿論、建ったばかりのまさに新築物件。 従って、そこで過去に誰か自殺したとか、殺人事件が有ったとか… そういった『イワク』は一切、無いのだ。 「もしかして…D棟だけでなくベッドタウンが有る土地全体に、何か『イワク』が有るのでは…」 とも考えたが、D棟以外の他の棟では、そんな騒ぎは一切、起こっていない。 「これは…一体、どういう事だ?」 悩んだ鈴木君は、知人の霊媒師にD棟を見てもらった。 すると… 「D棟は『霊道』を塞いで建っておる」 という回答が返って来た。 『霊道』というのは… 霊たちがいつも移動の時に通る、決まった通り道なのだと言う。 その霊媒師の説明によると… 恐らく、ここから4キロほど離れた所に有る『〇〇霊園』に住まう霊たちが夜な夜な墓から抜け出し、その『霊道』を通って様々な場所へと行くとの事。 (何の用で、また、どこへ行っているかまでは不明だが) そして…その用事が済んだ(?)霊たちは、再びまた同じ『霊道』を通って、墓へと帰って行く。 D棟は… まさにその『霊道』を塞ぐ形で『でん!』と建っているのだと言う。 「まあ、『塞ぐ』と言っても、勿論、霊たちはD棟をぐるっと迂回する訳ではなく、建物の中をすーっと『すり抜けて』行く。 その為、D棟の住人で霊感が有る者は、夜になると様々な霊たちの姿を目撃してしまう訳だな。 しかしだな。別に『霊道』だからと言って、D棟の中に『何か良くないモノが溜まる』という訳ではない。霊たちは『本当に、ただのいつもの通り道』として、そこを通っているだけだ」 と、霊媒師は説明を続けた。 「なるほど…」 鈴木君は、考えた。 その霊たちが住まうという『〇〇霊園』というのは… 歴史と格式が有る広大で有名な霊園だ。 とは言え、その霊園はD棟が有るベッドタウンからは、実に4キロも離れているから(徒歩で行くと一時間もかかるのだ)、鈴木君はそれほど気にしていなかったのだが… 「まあ… ただの通り道として霊たちが通っているだけだと言っても、 その姿が見える霊感持ちの住人にとっては…毎晩のように頭が潰れた霊や全身血だらけ霊の姿が見えてしまうという訳だな…。これは確かに、たまったものじゃないな…」 そこで鈴木君は、思い切ってその事を会社に報告し、検討を重ねた結果、D棟の取り壊しが決まった…との事であった。
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