23人が本棚に入れています
本棚に追加
{4}
さて、それから数日後。
私は、自分の荷物と共にそのD棟に引っ越した。
建物は二階建てで、一階は3LDKの申し分無い造りだ。
何より、周囲の環境が鈴木君が説明していた通り、自然に囲まれた本当に素晴らしいロケーションだ。
私は、その日のうちに荷ほどきを済ませ、
夜となり、ベッドで眠りについた。
と…
『すいません…』
何者かの声(中年の女性の声?)が…
聞こえて来る『夢』を見た。
次の日の朝、
起きてみると夢の内容はよく覚えていないのだが、
その時に聞いた『すいません』という言葉だけは、妙に頭に残った。
さて。
こうして、私はD棟での生活を本格的に始めた。
私の毎日の日課は、
まず、午前中は家の周りの自然を満喫しながらウォーキングを兼ねての散策。
そして、午後からは自宅(D棟)で小説の執筆というものだ。
それで…
更に数日が過ぎたのだが…
私が、霊の姿を見る事は、一向に無かった。
まあ…
元々、私は『霊感が零感』(レイカンがレイカン。笑)という訳だ。
それより…
ここの周りの環境は、自然に囲まれていて本当に素晴らしい。
私は、毎日のウォーキングを続けるうち、私なりに『お気に入りのコース』を見付けていた。
そんな、ある晩の事。
夜に私が眠りについていると…また妙な夢を見た。
『ごめんよ…』
(今度は、男の子の声)
またもや…
次の朝起きてみると、夢の内容は覚えていないのだが『声』だけは、頭に残っている。
「もしかして…」
と、私は考えた。
「夢の中で、私が聞いたこれらの『謝罪の言葉』は…
このD棟を『霊道』として通っている霊たちが、私に謝っているのではないだろうか…」
『霊道』とは言え、
『人の家』に上がり込むのだ。
多少の申し訳なさは、感じているのではないだろうか。
「何とも、律儀な霊たちじゃないか…アハハ」
そして、それからというもの…
私は、『彼ら』からの様々な謝罪の言葉を夢の中で聞くようになった。
『すいません』
『ごめんよ』
『申し訳ない』
『すまん』
『メンゴメンゴ』
『かたじけない』
『ソーリー』
『ごめんなさい』
しかし、それ以外の不思議な現象は全く起きなかった。
そして…
こうして私は、
鈴木君との『約束の一ヶ月めの朝』を無事に、迎えたという訳だ。
最初のコメントを投稿しよう!