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憑き物を斬る妖刀『月斬』。その異質な妖気に女が目玉をギョロリと剥く。
刹那、オイラは月斬で魔物女の股を捉え、そのまま脳天まで斬り裂いた。
「オイラは待たされ九兵衛……閻魔お抱えの退魔屋だ」
破邪の力で魔物は砂塵のように散り消える。その様はいつも……。
「げぼろろ臭っせ! やっぱ魔物の口はクセェ! 何が金木犀だ……」
よろよろと化粧台の椅子に座り込んだ時、床下から幼女が湧いて出た。
「……ヤミー。あれが魔物だって気付いてた?」
「当たり前でしょ、あたしは閻魔よ」
そう、この子が死者の生前の罪を裁く閻魔羅闍(えんまらじゃ)のヤミー。見た目は幼女だが、れっきとした冥界の王だ。
「まぐわってから始末するのかと思った」
「魔物は口が臭いからヤダ……」
「あんたも口、臭いじゃん。死人だから死臭がする」
くうっ! それ気にしてるのに!
「でもね、今日はあたしがイイ娘(コ)を紹介してあげる。誕生日のお祝いに」
「だから誕生日じゃないって。どうせクッサクサの魔物っ娘……」
顔を上げて思わず唖然。
「誕生日だよ。200年前の今日、待たされ九兵衛が生まれたの」
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