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目の前で、スレンダーながらフカフカキュッ!な、キャミソール姿の美人が微笑んだ。
「……それって命日。ヤミーに殺された日……」
胸に空いた穴は、この子が笏でオイラを刺し殺した時のモノ。
剣の腕を勝手に見込んで、生き人には持てない月斬を扱えるようにと死人にした。それが200年前の話。
「一時的だけど霊力で成長してみたよ。まぐまぐする?」
「閻魔サマとはちょっと……ナニがどうなるか。でもはぐはぐくらいなら……」
うわ言のように口走ったオイラの膝の上に、ヤミーは事も無げに跨った。……ド正面から。
「はい、はぐはぐ」
オイラを見下ろす無邪気な黒曜石の瞳、そのくせ薄紅色の唇は妙に艶っぽい。
罪を裁く閻魔のくせに、このアプローチはかなり罪深い。
「ヤミー……」
「ちょっと。臭いからこっち向かないで」
「…………はい」
俯いて、ヤミーの胸に顔をうずめる。うん、これはこれで……イイ。
「ねえ九兵衛。夜が明けたら朝ワックしにいこ」
「はい……」
「お手手つないでね」
「はい……」
かまちょなヤミーがくれたひと時のプレゼント。
コレでなんとかしのげそうだ………
三日くらいは。
【東京かまちょ 了】
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