迷いと後悔と、或いは嫉妬と

2/15
前へ
/36ページ
次へ
 香織と別れた後、健二は家に帰らず駅の近くの喫茶店で、フレンチトーストをパクついていた。  すると、聞き慣れた声が健二の耳を捕らえた。  顔を上げ声のする方を見ると、背の高いほっそりとしたショートヘアの見慣れたクラスメイトの顔があった。  彼女の名前は黒川由実、健二のクラスの学級委員長。  健二は声をかけようと思ったが、一緒にいる相手を見て、やめることにした。 (あれ、だれやろ?どこの学生やろ?いや、違うか?恋人かな?けど、なんか揉めてる?もうちょいまつか、別れ話してたら俺にもチャンスかな?あほっ、いま香織に振られたばっかりやないか!)  黒川由実の相手は健二よりかなり年上のように思えた。  しかも、別れ話の真っ最中なのは、健二にとってはチャンスのように思えたのだった。  何度か言い合いのようになり、男の方が席を立ち店を出ていった。  黒川由実は悔しそうに唇を噛み、目を真っ赤にしていた。  声を掛けるのを躊躇われたが、健二の中に香織を失った喪失感が、彼を思いきった行動に移させた。  うつ向き加減で、声を殺して泣いているような感じの黒川由実に健二は声をかけた。 「黒川さん?黒川さんやろ?同じクラスの 川上健二やけど、わかる?」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加