22人が本棚に入れています
本棚に追加
香織と別れた後、健二は家に帰らず駅の近くの喫茶店で、フレンチトーストをパクついていた。
すると、聞き慣れた声が健二の耳を捕らえた。
顔を上げ声のする方を見ると、背の高いほっそりとしたショートヘアの見慣れたクラスメイトの顔があった。
彼女の名前は黒川由実、健二のクラスの学級委員長。
健二は声をかけようと思ったが、一緒にいる相手を見て、やめることにした。
(あれ、だれやろ?どこの学生やろ?いや、違うか?恋人かな?けど、なんか揉めてる?もうちょいまつか、別れ話してたら俺にもチャンスかな?あほっ、いま香織に振られたばっかりやないか!)
黒川由実の相手は健二よりかなり年上のように思えた。
しかも、別れ話の真っ最中なのは、健二にとってはチャンスのように思えたのだった。
何度か言い合いのようになり、男の方が席を立ち店を出ていった。
黒川由実は悔しそうに唇を噛み、目を真っ赤にしていた。
声を掛けるのを躊躇われたが、健二の中に香織を失った喪失感が、彼を思いきった行動に移させた。
うつ向き加減で、声を殺して泣いているような感じの黒川由実に健二は声をかけた。
「黒川さん?黒川さんやろ?同じクラスの 川上健二やけど、わかる?」
最初のコメントを投稿しよう!