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ER専用搬送口に、タイヤを軋ませながらけたたましいサイレンとともに救急車両が飛び込んでくる。
暴走車さながらの勢いに、搬送口でスタンバイしていたスタッフも、思わず脇へ避ける。
救急隊員のひとりが、後部扉を全開にして、慎重にストレッチャーを降ろし始める。
中にいたもうひとりが、酸素マスクをあてがわれ、露出している部分――顔から首筋、肩にかけてと胸上部が血にまみれ、ぐったり横たわっている患者の点滴バックを持ち上げながら、こちらも細心かつ取り急いで車から降りてくる。
看護師たちが駆け寄り、すぐさまERへ向かう。救命士の報告を聴きながら、医師が待ち構える、カーテンで間仕切りされた処置室へと運び込む。
こんなシーンをTVドラマで何度も観た。患者は意識もうろうまたは完全に意識を失っているが、瞼の裏側で、廊下の照明が縷々(るる)と列なるのをとらえている、というような――
いまストレッチャーに乗せられ、生きるか死ぬかのギリギリ瀬戸際に立たされているのは、俺自身。もうすでに死にかけているであろう俺自身。
もうろうとした意識下で、白い光のラインを意識している俺自身……。
なにが起こったのか判らない。頭の中を回る灯籠の絵は、いまいち輪郭がはっきりしない。
………高速を走っていて………玉突き事故の現場に出くわして………けが人を救出する手伝いをしていた。そこに居眠り運転の大型トラックがつっこんできて………
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