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どうやら歴木まいかのほうも、それらしいショットを撮られていたらしい。
執筆籠もりにいつも利用している高級老舗旅館のラウンジで、今日発売の写真週刊誌を読んでいる客を見つけた俺は、表紙を飾っている紺地に白抜きのタイトル文字と、円形に切り取った俺の少し伏せた顔写真、そして、いかにも小旅行風のいでたちで自宅マンションを後にする歴木まいかをとらえた写真が大々的にレイアウトされているのを確認して、思わずほくそ笑んだ。
チリン。
とっかかりとしては申し分ない。いや、これならおそらく期待以上の効果が得られるだろう……
*
運命の輪(Wheel of Fortune)が、俺の頭上でいつまわり始めたのか、定かではない。
だが、一度まわり始めたら、そうやすやすとは止まらないものであるらしい。
俺に関することのすべてが、うまくいく方向に動いているのは間違いなかった。変化のスピードが速いことも自覚していた。
この執筆籠もりの最中に、何かが起こると感じていたのだ。
そして俺は、“運命の女”と出逢った。
チリン。
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