第1章

10/18
前へ
/18ページ
次へ
それを聞いていた牧原が、ちょっといいかと俺を見る。何だ?と言う俺に意表つく言葉を投げかけた。 「澤登、その時にその次女は、ただ立っていたのか?それもと泣いていたのか?」 泣いて…?立花を見て、おい、どうだったっけと目で問いかける。確認するように遡った。 「おい、牧原。思い出した、あの時、血まみれの子供は泣いてなかったよ。俺達は、あの惨状に小さな子供が血まみれで父親の傍に立っている事に気を取られていた。生存者がいたという事に驚き、それが小さな子供で、怯えさせないように保護する事に神経を注いでいたんだ。」 「そうでしたよね。確かに、泣いてもいないし、血まみれで横たわっている父親に話しかけてましたよね。今、思えば…何だか違和感ありますね。」 ひとつの質問がみんなの脳細胞を活発にさせた。 何故、泣いていなかったのか…放心状態だった?いや、幼くて状況がわからなかった?これはあり得る。みんなで状況を明らかにしていく。俺と立花は出来る限り記憶を蘇らせて当時の現場をみんなに伝えた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加