第1章

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その事件が起きたのは一年前。枯れ葉が乾いた音を立てて道路を転がる寒い夜だった。 五人家族を襲った悲劇。一家惨殺事件。だが、ひとり…生き残った子供がいた。 被害者は佐田 慎一郎 38歳。妻の奈未 36歳。長男の光輝 11歳。長女の紗弥加 8歳。 生き残った子供は、次女の真緒 5歳 だった。 発見されたのは、11月21日早朝。死亡推定時刻は前日の20時~23時だった。事件が起きたのは11月20日の夜という事だ。 「この事件は、一課の澤登と立花は現場に行ってるよな。」 課長の問いかけに、はいと返事をした。 「この事件の犯人はまだ挙がってない。」 課長は、そう言うと俺達を見て、ふっと笑った。 「流石、俺が選んだだけあって、もう気づいているよな。」 この鬼課長は自分を誉めてんだか俺達を誉めてんだか…片方の眉をヒクっとさせてぶっきらぼうに言う。 この部署は、特G。Gは疑惑のG。この事件に疑惑…。 誰に向けられた疑惑だ?おいおい…まさかだろ? 空気がざわついた。
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