第1章

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結構な量の捜査資料に目を通す。午前中は活字とのにらめっこで、これでもかというくらい読み込んだ。 確かに当時、俺と立花は現場に行ったが、今はこの事件を担当していない。捜査をしているのは別の班だ。俺と立花は別の殺人事件を担当していた。 改めて事件の流れを見ると、捉え方によっては意味の変わる発言に気づいた。 当時、既に息をしていない両親や兄、姉にすがり、血まみれになった5歳児は現場にいた誰もの涙を誘った。反応のない両親や兄、姉を起こそうとしていたのだろうと、その姿を想像させた。 殺害現場はリビングとキッチン。キッチンはリビングを見渡せるようになっている。そのキッチンの前に母親、リビングのソファーに父親、長男はリビングのドアの前で、長女はソファーの前のテーブルの下で息絶えていた。 フローリングの床には赤い小さな足跡が無数についていた。それさえも、涙を誘う。家族を起こそうとするいたいけな5歳児の行動だと誰もが遣りきれない思いにかられたんだ。 だが…捉え方で意味が全く変わってくる。鬼課長は冷静だ。情を挟まない。 そして、気になる証言を文面に見た時、タイミングよく近藤が鬼課長を呼んだ。
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