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「笑い事じゃないでやんす。お金を盗られる所だったでやんすよ?それにしてもなんだったでやんすか。あれはぁ、怖かったでやんすよぉ。」
身震いしながら言う小町。
「帰ってきたならいいじゃあねぇか。気にする事じゃああるめぇよ。でもまぁありゃあ相当に手馴れてるな。んなことより遊郭だ。遊郭。」
身震いどころか気にする素振りも見せない佐之助。
「全部盗られてしまえばよかっでやんす」
佐之助に嫌味を言う小町。
そんなやりとりをしながら夜道を歩く二人。しばらく歩いていると、人でごった返す賑やかな場所へと辿り着く。
「うへぇ~、やっと着いたなぁ~。男がいっぺぇいやがるな。おい、はぐれんなよ。じゃなきゃとって食われるちまうぞ。」
小町に注意を促す佐之助。
「こんな人だかりじゃはぐれないほうが無理でやんす。だからきたくなかっでやんす!」
「あ~あ~もう怒るんじゃあねぇよぉ。手でも握りながら歩くか?」
「に、握らないでやんす!」
そう言って佐之助の着物の袖を両手で強く掴む小町。
「一人でウロチョロすんなよ。」
「しないでやんす!」
小町の身を案じながら歩く佐之助。
「それにしてもこんな人だかりができてちゃあ女の姿が見えねぇなぁ。」
あまりの人の多さに肩を落とす佐之助。
「しょうがねぇ、まず飯にするか!どこかに飯食える場所ァねぇかねぇ。」
と言い飯屋を探し始める佐之助。
「め、飯ぃ?昼間あれだけ団子を食べたのにまだ食べるでやんすか!」
「んな事言われてもよぉ。女が拝めねぇんじゃあ飯食うしかねぇだろぉ。それにありゃ昼飯だ。晩飯はまだ食ってねぇよ。」
欲望の権化と化す佐之助。それに対し小町は、「お昼にあれだけ食べれば充分でやんす。それに、そんな持ち合わせじゃおいしいご飯は食べられないでやんすよ!」
「んあ?そうなのか?まぁ、食えりゃなんだっていいんだダッハッハッハッハ!」
ヘラヘラと笑う佐之助。そんな言い合いをしていると、「あれぇ?こんなとこでなにしてはるの?小町ちゃんがこんなとこ来るなんて以外やわぁ。」
どこからともなく聞き覚えのある女性の声がする。
「おや、昼間のお侍さんも一緒かいな。」
と近づいてきた声の主は酒屋のお加代。
「お加代さん、相変わらずいい女だ、二度も会うたぁなにかの縁だ。俺の女になってくれ!」
お加代の手をとり言う佐之助。
「調子のえぇお人やわぁ。」
笑顔で流すお加代。
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