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「誰かに見習ってほしいでやんす!」
とある男に文句を言う小町。
「この部屋や、入るで」
お加代と小町は綺麗な装飾の施された大きな引き戸を開け部屋へと入って行く。金があしらわれた光輝く豪勢な部屋で、胸に晒を巻いた短髪の女が寛いでいる。
お加代は持っていた重箱を差し出した。
「薔薇姫はん、お食事でございます。ごゆるりと。では、失礼致します。」
深くお辞儀をし、小町とともに部屋を出ようとするお加代に薔薇姫が口を開く。
「ちょいと待ちなんし!」
お加代と小町に言い放つ薔薇姫。
「ここで共に食っていきなんし。」
そう言いお加代と小町を部屋に留まらせる。薔薇姫。お加代に隠れ怯える小町。
「そこの娘、加代に隠れる華奢な娘よ!」
「は、、は、はい!なんでやんしょ!」
あまりの焦りように言葉に詰まる小町。
「おまえの持っているその重箱はなにが入っている?」
助けに入るお加代。
「これは次のお得意様の分にならはります。中身は薔薇姫はんのものと変わらぬ御膳どすよ?」
「次のお得意ってぇ言うと鈴蘭か。あの我儘娘め、同じもんを食べやがるとはいけ好かねぇ。鈴蘭はまだいい。狂花のところへは行くのか?」
お加代に問う薔薇姫。
「狂花はんのところへは行かへんなぁ。今日は鈴蘭はんでお終いどす。」
薔薇姫に伝えるお加代。
「飯を頼むことすらしねぇのか。嫌な女だまったく。お前らも狂花には気をつけなんし。」
注意を促す薔薇姫。それを聞き小町は
「狂花という女はそんなに嫌な女なのでやんすか?一番人気ということは一番好かれているということでやんしょ?」
「確かにあいつは一番人気だ。それだけは別格だ。一番人気ともなると待遇も随分変わり、屋敷も飯も豪勢なもんだ。たが、吉原でのあいつの評価は頗る悪い。男の客どもには相変わらずの人気だが。女中の連中の間では黒い噂が絶えなんし。」
「黒い噂?城主大名をどうこうっていうやつでやんすか?」
「城主大名?まぁそれもあるかもな。
………。最近巷で流行りになってる金目当ての盗っ人ってあるだろ。あれに一枚噛んでるってぇもっぱらの噂なんだ。」
「ぬ、盗っ人でやんすかぁ!」
「一番人気と三番人気とはそんなに違うものなんでやんすか!」
「わいはあの女と同じ様に三番人気なんて言われてはいるがあんな女と同じ目で見るのはやめなんし。」
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