第2章 武士道のない侍

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第2章 武士道のない侍

【それは存在している】 「うまい飯と女ぁ?それが侍の言うことかぁ?本当に魂の抜けた野郎みてぇだなお前ぇ」 呆れたように言う大男。その言葉に佐之助は臆する事なく言葉を返した。 「抜けてんじゃねぇ、折れてんだ。それに白昼堂々女を襲う無粋な野郎に言われたくねぇよ。女は襲うもんじゃねぇ愛すもんだ。まぁいい女に限るけどなダッハッハ!」 この言葉に町娘が黙っていなかった。 「侍のくせになにいってるでやんすか!いい女に限るってそんなのあんまりでやんす!わっちが女じゃなかったらどうしてたでやんすか!」 声を荒げていう町娘。佐之助は 「んなこと知るかい。お前が女でしかも顔が良かったから助けただけだ。だいたい男が昼間に襲われるわけねぇだろ。」 そんな二人のやりとりを見ていた大男は堪忍袋の尾が切れ遂に刀を振りかざしてきた。それを佐之助は刀を抜かずに鞘で受ける。刀を抜こうとしない佐之助に大男は 「意地でも抜かねぇみてぇだな。」 その言葉に佐之助は 「抜かねぇっていったろ。」 と続ける。力を強める大男。変わらず鞘で受け止める佐之助。しかし、大男の力はどんどん強まる。力を強めながら佐之助を威圧する大男。佐之助の刀の鞘には大男の力が既に食い込んでいる。それを見た佐之助は溜め息を吐きながらしぶしぶ刀の柄を持ち、「仕方ねぇ抜いてやるか」 そう言って刀を抜いた。頑なに刀を抜くのを拒んでいたのにもかかわらずあっさり抜いた佐之助をみて男は驚いた。大男はすぐに佐之助の刀に自分の刀を打ち合わせようとしたが刀は鞘に深く食い込み抜けなくなっていた。焦る大男。すかさず佐之助は刀を振り落とす。覚悟を決める大男。「これで終ぇだ!」 男に言い放つ佐之助。覚悟を決め目を瞑り叫ぶ大男。刀に斬られる大きな音が鳴り響く。その後しばしの静寂が流れ、男が目を開ける。自分の体は斬られていない。そして男の目の前に佐之助の姿。大男が目を開けたのを確認し佐之助は「じゃあな。刀抜いたからもういいだろ。ったく、お前のせいで鞘がブッ壊れちまったじゃねぇか。」と言い放った。大男が鞘の方をみると食い込んでいたはずの自分の刀が折れていた。佐之助が斬ったのは刀身だった。刀身を折るほどの佐之助の剣筋に怖気付いた大男は急いで逃げ出した。佐之助はむき出しの刀を肩に掛けそれを目で追った。その後佐之助は突き飛ばされ煤だらけの町娘に
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