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第4章 納まる刀と遊郭と
【一人の男に変わりはしない】
団子屋でお茶を啜るお加代と冠十郎。
「しっかし今のお人、侍にしては随分とゆるい人やったなぁ。会って早々あたいのこと口説きはるとは。悪い気はせぇへんかったけど。」
「だらしのない侍もいるものですな」
佐之助の先程までの振る舞いを話題に談笑をしているふたり。一方、その頃佐之助と小町は刀屋で鞘を物色していた。「鞘に刀が食い込んで使いもんにならなくなったって?あんたどんなやつと斬り合いしたんだい?まぁでもこれなら壊れる心配もねぇよ。」
刀屋の店主はガラクタの山のなかから一つの鞘を差し出した。佐之助はその鞘を手に取る。 「なんだこりゃ?こんなもん重たくて肩凝っちまうよ。」
佐之助が手に取った鞘は通常より数倍も重たく、耐久性に優れた鞘だったようだ。店主はその重くて固い鞘を佐之助に強く勧めた。しかし、佐之助は
「んなもん付いてりゃなんだっていいんだ。どうせ戦わねぇーんだから。前の奴だって一方的に向かってきただけだしな。」
と店主の言葉を跳ね除け一番安い普通の鞘を買って刀屋を後にした。佐之助と小町が団子屋に戻るともうお加代の姿はなかった。二人が帰ってくる少し前に店を出たようだ。 「んだよ~お加代さん帰っちまったのか~。」
「落ち込んだってあんな美人に相手にされる訳ないでやんす!無駄でやんすよ!」
「勝手に決めんじゃあるめぇよ。イモ娘」
「わっちはイモじゃないでありんすよ!」
「まぁまぁ、お加代さんはウチの常連客だし酒屋もそう遠くないからまた来ますよ」
二人のやりとりを冷静に静止させる冠十郎。冠十郎の言葉を聞き落ち着きを見せ始める佐之助と小町。
「まぁいいか、女はなにもあいつだけじゃねぇや。ほかにもいらぁな。ダッハッハ」
「何を言ってるんでやんすかこの男は」
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