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佐之助の言葉を軽く流す小町。
「お、そういやじいさんこれ返すぜ。随分と余ったんだ。」
そう言って佐之助は鞘を買って余った金を冠十郎に渡そうとした。すると冠十郎は、「もともとあなたに渡したものですじゃ、とっておいてくれますかな。」
そう言って佐之助に突き返した。佐之助はその金を遠慮せずに胸にしまった。それを見た冠十郎は、「しっかりしまい込んだほうが身の為ですぞ。最近ここら辺に金を狙った盗っ人が出没するようですからな」
と、佐之助の身を案じた。
「盗っ人ぉ~?物騒な連中が世の中にゃあいんだな~。どこから湧いてくるんだぁ?そんな連中はよ。」
盗っ人は神出鬼没で普段どこで何をしているのかもわからないようだ。姿も、あるときは武士の姿、またあるときは綺麗な着物の花魁姿、被害に遭う人によって違うというのだ。と、冠十郎は佐之助に伝え念を押して身を案じた。佐之助は金をしっかりとしまい直し、言った。
「それじゃあ行くか!遊郭へ」
「へ?」
佐之助の突然の言葉に驚く冠十郎と小町。
「俺の金を盗る奴ァ綺麗な女の姿をしてる気がすんだ。だからてめぇで遭いに行く」
「なんで女の姿だと思うでやんすか!遊郭に行きたいだけでやんしょ?女目当てでやんしょ?」
根拠のない佐之助の言葉を咎めるように言う小町。
「いやぁよ、話聞いてたらあいたくなっちまってな、綺麗な着物の花魁に。いい女に盗られるなら悪い気ァしねぇかもなぁ。ダッハッハッハッハ!」
呆れ返る小町。
「あんだその顔は、安心しろい、昼間っから行くような無粋なマネはしねぇよ。」
「そういう問題じゃないでやんす」
「とりあえず休むか、じいさん団子作ってくれ。」
そう言って再び団子屋に居座る佐之助。
その頃、吉原では。
昼間にもかかわらず賑わう遊郭。
その奥の屋敷に一際人だかりができている
「おいなんだあのいい女は!」
「ありゃ一番人気の狂花だよ。ぺっぴんだなぁ~。」
客の男どもが騒ぎ立てる。その様子を狂花は煙管を咥えながら見ている。
「馬鹿な生き物だねぇ、男ってのは。金が入るとすぐ女に貢ごうとする。まぁだからあたしらがこんないい暮らしをできるわけだが。」
煙管を口から外し煙を吐く狂花。
「女は男に貢がせてなんぼ。貢ぐ男が悪いのさ。貢がせる以外にもふんだくる方法はあるんだけどね。」
狂花は不気味な笑みを浮かべる。
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