カプチーノの泡が消える頃

ほろ苦いそれは珈琲とよく似ている

「こんな話、久呂武さんにするつもりはなかったんですけどね。つい喋ってしまうのは、貴方の特技なのかもしれませんね」

「さあ、どうでしょう。聞き出すつもりもなかったわけですから。でも、二人の出会いを知って、ようやく色んなことが繋がりました」

「何も知らなかった凛から聞く話は、不思議なことも多かったでしょうから」

「ええ、まったく。けれど、恋愛にのめり込み過ぎず、ちゃんと目標に進めていることも聞けて安心しました」

「こちらとしては、そのおかげで全く会えなくなりましたけど」

彼は、コーヒーカップを持ち上げて深く溜め息をついた。凛さんに暫く会えていないのは本当らしい。

「まあ、そんな彼女だから洋くんも目が離せないんじゃないですか」

「わかってるなら諦めてくださいよ」

「それはできない相談ですね。また別の話ですから」

「久呂武さんじゃなきゃこんなに苦労しないんですよ、俺」

「それは僕も同じだと言ったじゃないですか。まあ、気にせずどうぞ幸せになってください。もしもの時のために僕は準備を整えて待っていますから」

「……もしもなんてありませんから」

「さあ、わかりませんよ。洋くんは僕のことばかり気にしていますけど、敵は案外見えないところから忍び寄るものです。僕くらいわかりやすい方が安心でしょう」

笑顔で言えば、彼はまたひどく嫌そうな顔をした。