ほろ苦いそれは珈琲とよく似ている

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高校は母の言うように公立へ進み、大学受験は東京都大学へ進んだ。特待生として入学をすれば入学金が無料になると知っていたから。東大へいったのはそれだけのこと。就職にも有利だし、デメリットよりもメリットの方が大きかったから。ただそれだけ。 高校生の時、初めて友達の父親に珈琲の美味しいカフェへ連れて行ってもらった。高校時代からバイト三昧で余裕のなかった僕には、お洒落なカフェでお茶をするなんてことは考えもしなかった。 珈琲なんて、インスタントか缶コーヒーくらいしか飲んだことがなかった。そこそこ偏差値の高い高校に進学したことから、そこでできた友達は金持ちのお坊ちゃんが多く、日頃から良質なものを食していた。だからその日連れていってもらった先の珈琲はもちろん、今まで飲んだことのない質の高い珈琲だった。 世の中にこんなに美味しい珈琲が存在するのかと驚いた。挽いた豆に湯を注いだだけの飲み物にこんなに差がでるものかと衝撃を受けたのだ。それからはその珈琲のことばかりを考えた。 バイト代がある程度貯まり、少しだけ余裕がある時は、その馬鹿みたいに高い珈琲を飲みに行った。大学へ入り、塾の講師や家庭教師のバイトに切り替えてからは収入も増え、珈琲を飲みに行く回数も増えた。
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