掃き溜めのクリエイター

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 妙に人気のない街。警報。執筆のためにテレビもネットもほとんど触れなかったここ数日の自分。  目に映るものの正体を拒否しようと試みてはみたが、心臓の鼓動がどんどん早くなり、認めたくない言葉が、とうとう口からこぼれでてしまった。 「ミサイル……か……」  子供の頃からさんざん教えられた、広島、長崎の原爆による惨状が、頭の中に矢継ぎ早に映し出される。  待てよ。そう言えば自分は飛び降りて死のうとしていたんじゃないかと、唐突に思い出す。  まさかこんな日に、核の炎に焼かれて死ぬことになるとは。  恐怖や焦りを感じる間もなく、ミサイルが上空で真っ白い閃光を放った。  俺は目を逸らさずに、それを見ていた。  爆心地に近い人間は、一瞬で壁の染みになったという。逆に離れていた人間は、全身の皮膚を焼かれても、まだ生きていたという。  俺はどっちだろうか。  正解は…………  残念ながら、どちらでもなかった。  巨大な水風船のような光の玉が、夜空に静止している。閃光に照らされた世界は、徐々にその色を失っていき、真っ白な紙に鉛筆の線で描かれたような世界に変換されていった。 「あは、あはは……なんだよコレ。とうとうおかしくなっちまった」  自分の目で見ているものがとても現実とは思えず、俺は自分が壊れたしまったと思った。でも、本当に壊れてしまったのなら、壊れてしまったと冷静に認識できるものなのだろうか? 「おじさん、これ」 「へっ? あ、あぶなっ!」  子供の声が真後ろからし、背中に何か固いものをぐっと押しつけられて、俺は危うくビルから転落しそうになった。  フェンスにしがみつきながら振り返ると、線画で描かれた少女が、俺が使っているタブレット端末とペンを突き出して、立っていた。  その顔はどこか「彼女」に似ている。 「名前、思い出せないんだね」 「名前……?」  少女は俺の心を見透かしたように、そう言った。  そうだ。俺は、短い間でも一緒になった「彼女」の名前を、一人になってから忘れてしまった。思い出したくないという気持ちがそうさせたのか、時間がそうさせたのか、自分でも良く分からない。 「夢を、理想を、描けばいい。あなたにはそれしかないし、それだけがあるとも言える」  全てを悟ったような少女の言葉の意味を、俺はすぐには理解できなかったが、ペンタブレットを受け取り、空を見上げた。
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