掃き溜めのクリエイター

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 まず、クジラを描いた。自分の目でクジラを見たことはないけど、とにかくでっかい生き物が、俺は子供の頃から好きだった。  線画の空に、線画のクジラが浮かび上がる。  クジラが大口を開けて光の玉を飲み込み、そのまま花火となって夜空に咲くという展開を考えた。  タブレット上でアニメーションを作る時と同じ要領で、1コマ1コマ、これ以上ない集中力で描き上げていく。  一度、一連の動きを連結して再生してみた。  タブレットと空に、クジラが光の玉をばくりと飲み込み、そのまま花火となって広がる線画のアニメーションが展開する。 「できたよ。ここからどうすればいい?」  俺は振り返ってきいたが、背後に少女の姿はなかった。  もう一度正面を見ると、世界が色のある現実へと戻っていった。  手元にあったはずのタブレットも、いつの間にか消えている。 「どうなった……? ああっ!」  時間が少し巻き戻されたみたいに、再び夜空の雲から、ミサイルが真っ逆さまに落下してきた。  すると、視界の横から巨大な空飛ぶクジラが姿を現し、大口を開けてミサイルへと突進していく。  上空で閃光を放つミサイル。  クジラがその光を丸ごと飲み込み、核爆発によって身体がぷうっと膨らむが、白い光はくじらのなかで七色の光へと変換されて炸裂し、ドーンと夜空に大輪の花を咲かせた。 「色塗りはしなくていいんだな……」  そんな間抜けな感想を抱きつつ、この花火は、金沢にいる「彼女」見えているだろうか。天国にいる幼い息子は、新海監督はどうだろうかなど、消えゆく花火の光の中に、様々な人の顔が頭をよぎった。  やがて花火は火の粉ひとつ残さず消え去り、夜の静けさが戻ってきた。  日本中どこにでもある、平均的で退屈な夜の街。  しかし、つい先程までと同じ景色のはずなのに、街の灯りの一つ一つが、ひどく大切なもののように思えてくる。 「もどるか……」
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