掃き溜めのクリエイター

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 屋上の出入り口にはカギがかかっており、内側からも外側からも入れないようになっている。また雨どいを伝って、元の場所に戻るしかない。  雨どいを抱える形で、ゆっくりと慎重に、雨どいの固定具に足をかける。非常識な世界を目撃したせいで、頭が少しぼーっとしている。  俺の汗の臭いにでも引き寄せられたのか、耳元に小バエが飛んできて、「ブウン!」という羽音を立てた。  小さなハエでも、耳のすぐ隣りで音を立てられると酷く大きな音に聞こえ、俺は思わず振り払おうと、片手を離してしまった。 「あっち行けクソッ! あっ! うあああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」  上体のバランスを崩してのけ反ってしまった俺は、そのまま後ろ向きに倒れ、雨どいから両手を、続いて両足を離してしまった。  終わった……。しかし、あれは何だったのだろう。死にたくないという無意識の願望が見せた、幻だったのだろうか。  落下しながら、俺はそんなことを瞬間的に考えていた。  そして、一つの答えが出た。  世界は再び線画と化し、空中で静止した俺の手元には、ペンタブレットが握られている。 「あなたはまだ死ねないよ。少なくとも、彼女の名前を思い出すまではね」  空中に停止したままの俺に、ベランダに寄りかかった少女が、どこか楽しげに、そう言った。
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