まもるべき純情

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 ようやく考え始めたところで、性懲りもなく前田がよく喋る口を動かし始めた。 「大声出すと聞こえるぞ。そうなるとまずいんだろ」 「わかってるよ……ああ、もう、どうしよう」  はっきりいって、茜音は途方に暮れていた。  狭いし、暗いし、背中はちょっと重たいし、至近距離にいるのは、この前田だし――。  外からは、何やら学生の喋り声が聞こえている。どうやら集会があるらしい。危機的な状態は、ますます深い闇に染まっていく。  そもそもそれ以前に、この体勢をいつまで保てるのかという問題もある。  腕がぴきぴきと痛い。すでにもうギリギリだ。しかし力を抜くわけにはいかない。倒れてしまう。  もしそうなったら、茜音は自制心を保てなくなる――かもしれない。
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