3人が本棚に入れています
本棚に追加
ようやく考え始めたところで、性懲りもなく前田がよく喋る口を動かし始めた。
「大声出すと聞こえるぞ。そうなるとまずいんだろ」
「わかってるよ……ああ、もう、どうしよう」
はっきりいって、茜音は途方に暮れていた。
狭いし、暗いし、背中はちょっと重たいし、至近距離にいるのは、この前田だし――。
外からは、何やら学生の喋り声が聞こえている。どうやら集会があるらしい。危機的な状態は、ますます深い闇に染まっていく。
そもそもそれ以前に、この体勢をいつまで保てるのかという問題もある。
腕がぴきぴきと痛い。すでにもうギリギリだ。しかし力を抜くわけにはいかない。倒れてしまう。
もしそうなったら、茜音は自制心を保てなくなる――かもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!